ちっぽけなプライドと譲れない信念の境界線上で。

「第一志望です。」って言わないと落とされるんだよ。
就職の面接を終えた友人たちが口をそろえる。
ばかばかしいね、と僕は思う。

もちろん、企業からすれば、入社する意思のある学生を取りたいのは当たり前だ。第一志望の学生を採りたいに決まってる。けれど、学生からするとそれは微妙な問題だ。志望順位が決まっている人もいれば、とりあえずたくさんの会社を受けている人もいる。そして、どの会社であれ、落とされるよりは採用されたいと思って就職活動をしている。

第一志望って言わなかったら、落とされるよなぁ。

そんなこと学生は分かった上で答える。
そして、企業だってきっと分かった上で問う。

「そんなのマナーみたいなもので「もちろん。第一志望です!」って答えとけばいいんだよ。」と僕自身が語りかける。
「いやいや、嘘吐いて採用されたってうれしくないよ。」と僕自身は反論する。
「そんなちっぽけなプライド、捨ててしまえよ。」僕が囁く。
「でも...それは、僕の譲れない信念なんだ。」僕は主張する。
「じゃあお前の好きにしろよ。」と僕は吐き捨てる。
「ちょっと待ってよ、僕はそんなに強くないんだ。」と僕は僕にすがる。
「それが社会に出て、大人になるって事なんだ。」ともう一人の僕が諭す。

分かったような口を叩くなとも思うし、その通りかもしれないとも思う。
「もちろん、御社が第一志望です!」と言えば、自分を裏切っているように思う。
けれど、「違います。」って言って落とされる程、強い覚悟もない。

「...はい...そうです。」と弱気で答える僕に、面接官たちは苦笑する。
そんな映像が脳内をよぎる。

「結局、そんなこと聞いたって誰も幸せになんかなれない。」とつぶやいてみる。

ちっぽけなプライドと譲れない信念の境界線上をゆらゆらと揺れながら。