蛍を見に行った。
地元の緑地だけれど、結構たくさんの人が集まっていた。林の中、階段や石に気をつけながら、真っ暗な道を進んでいく。足下を光で照らすけれど、あまり光が強いと蛍は見れない。
暗闇の中で、蛍は小さく光っていた。一匹の蛍がまるで光をゆっくりと運ぶようにしながら飛んでいた。暗闇の中にぼんやりとした光を見つけた。きれいだった。
けれど、それは僕が想像していた"蛍"とは違っていた。きっとその場に来ていた人も同じではないかと思う。そこにいた蛍は数匹だけ。テレビで見る蛍は、大群が一斉に光の軌跡を描いている。だから、一匹だけを見ても蛍を見た気分にはならないし、なんだかがっかりした気分になることすらあると思う。僕も最初は大量の蛍が一斉に光る、幻想的な光景を想像していた。今回はたまたま、見た場所や時間の条件によって数が少なかったのかもしれない。けれど、たとえ一匹であっても、たとえ葉っぱの裏側のぼんやりとした光であっても、そのとき僕は確実に蛍を見ていた。想像でも、画面の向こう側でもなく、蛍はそこに存在していた。
環境保護を訴えるわけではないけれど、そういう"生の体験"っていうのは重要なことなんじゃないかなぁと感じた。教科書やテレビで見た気になっているものと、実際に目で見てみることのギャップは思っていたよりも大きかったし、そこで何かを感じることは記憶に残るものだと思うから。


蛍を見るために何台もの車が止まっていた。ヘッドランプやストップランプの光には何の興味を示さないのに、みんな小さな光を探しに行くっていうのはなんだか不思議。